尿酸値は高すぎると痛風の原因になるので、なるべく下げたいところです。しかし、実は低すぎても悪影響があります。
尿酸の基準値としては以下の通りです(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版からの引用)。
女性:2.4-5.8mg/dL
なぜ高いと良くないかというと、7.0mg/dL以上の濃度で尿酸が結晶化しやすくなるのです。結晶のかけらが剥がれると白血球に攻撃され、炎症が起こって激痛が起こることは前回も説明しましたね。
次に、低すぎる基準についてですが、尿酸値が2.0mg/dL以下の場合には「低尿酸血症」と診断されます。ふつう、尿酸は老廃物なので、腎臓で血液から濾過され、尿として排出されます。一方で、尿酸は体内の物質の中で最強の還元(酸化の逆、つまり抗酸化)作用を持ち、生体で発生する酸化ストレスを消去する効果があるそうです。不思議ですね。
尿酸値が低い群では心疾患や運動後急性腎不全が多いという報告がある中、尿酸値が高い群ではパーキンソン病の発症頻度が低いという報告があります。また、体内での活性酸素の増加に伴って尿酸が多く分泌され、活性酸素を減少させるという報告もあります。
低尿酸血症の原因としては、腎臓が尿酸を過剰排出してしまう腎性低尿酸血症が多いと言われています。腎性低尿酸血症の場合には、急性腎不全や尿路結石になる可能性が高い、とされています。この腎性低尿酸結晶は難病指定されており、非常に稀な遺伝的疾患なのですが、まだ疫学的には研究段階の状態です。ですから、低尿酸血症にはふつうなりにくいのですが、発見されづらい割に合併症が重篤なので説明しておきます。
まず運動後急性腎不全ですが、運動が終わってから数時間後に急激な腰背部痛、吐き気、嘔吐が特徴だそうです。尿酸が生体内の相対的な酸化ストレスの増加を招き,運動後に腎動脈の攣縮(=けいれんにより十分な血液が送れないこと)がおこり腎不全になるとされています。
2~4週間で腎機能が改善することが多いのですが、透析が必要となることもあり、約2割の人が再発してしまうそうです。この運動の種類についてですが、有酸素運動より無酸素運動の方が、運動後急性腎不全を起こしやすいと考えられています。つまり、息が激しく切れる以上の強度の運動や、負荷の強い筋トレですね。尿路結石の症状としては、おなじみの背部痛、血尿などがあります。
合併症の予防対策としては、運動前の十分な水分摂取が重要です。また、風邪を引いている時や、抗炎症薬(NSAID;非ステロイド性抗炎症薬など)を飲んでいる時に運動後急性腎不全が生じやすいことので、このような状況の時は急激な運動を避けることが必要になります。
また、先ほど腎動脈が痙攣して血液供給が十分になると書きましたが、これは冠動脈という心臓を栄養する血管でも起こりうるそうです。
急激に起こるものでなくても、心臓や血管への悪影響が報告されています。PIUMA study では、尿酸値が男性で4.5 mg/dl 以下、女性で3.2 mg/dl 以下の場合には、心血管疾患イベント(心臓関連の事故)発症のリスクが高くなるという結果でした。この研究の中では、尿酸が高すぎてもリスクが高いことから、J カーブ現象と言われています。
いずれにせよ、尿酸値は適切な値に保った方が良いということですね。低尿酸血症は難病による可能性もあるので早めに医療機関への受診をお勧めしますが、ふつうに過ごしている場合には高尿酸血症になる可能性が高いですので、飲酒・食事の量や肥満に注意してゆけば良さそうですね。
コメントを残す