自覚症状がない・軽い段階でも糖尿病が及ぼす身近な悪影響~傷・手術編~

糖尿病は、心臓や血管障害、神経障害や認知症の進行など多くの悪影響が知られています。ただ、症状が出るまでは自覚症状もないので放置しがちです。様々な病気の原因になるのは広く知られていることと思いますので、ここでは具体的に日常生活で起こる悪影響についてご説明します。

・手術など、外科的な治療が行いにくくなる
…傷が治りにくく(創傷治癒遅延)、感染などで重症化しやすくなるため

これを説明するには、まず体の細胞とブドウ糖の関係をご説明します。

体の細胞は全てブドウ糖をエネルギー源として動いています。そして、インスリンがないと細胞内に血糖を十分に取り込めません。そのため細胞の活動性が低下します。

同時並行で、細胞内のブドウ糖が足りないので、体の中のタンパク質を分解してブドウ糖を作ろうとして、ますます高血糖が進みます(異化亢進作用)。絵に描いたような悪循環ですね…。

傷が治りにくい原因としては、傷を治すためには、細胞が新陳代謝していくことが必要です。しかし、糖尿病では、エネルギー源であるブドウ糖が不十分なことで細胞の活動自体が低下している上に、細胞はタンパク質からできているのにタンパク質がどんどん分解されてしまいます。
そりゃ治りにくいわけですよね。

そして、傷を治すのに関連する免疫系の細胞も活動しにくくなるので、傷から感染しやすく、全身の免疫力も落ちているので重症化しやすくなります。

また、糖尿病では感覚障害が出やすいというのはよく知られていますが、傷に深く関係することとしては熱い・痛い、触った感じが分かりにくくなることです。

つまり、傷ができても気づきにくく、治りにくく、傷から感染しやすく、免疫力も低下しやすい→重症化し切断など外科的な処置が必要になりやすい→手術の傷が感染しやすく治りにくい…といたちごっこの様になってしまうんですね。

この様な状態で手術しても、悪い結果は目に見えていますから、まず高血糖状態を改善してから来て下さい、ということで手術の前に糖尿病治療のために入院することもあります。
今困っている症状なのに、血糖が十分下がるまで待たなくてはいけないんですよね。

更に言うと、手術後も術後高血糖という状態に陥りやすいです。手術は、治療のために行なうことですが、体にとっては大怪我をしたような状態になります。危険な状態にあると判断した体は、その状況で逃げる・もしくは戦うために交感神経を興奮させ、アドレナリンや成長ホルモンなど、活動するのに必要なホルモンを出します。これらは抗インスリン作用を持つだけでなく、インスリンへの抵抗性を上げ、グリコーゲン(体内に蓄えていた糖)を分解してブドウ糖にしたり、糖を新しく作ったり…と、血糖を上げるためにあらゆることをします。
体が自分のためにやっていることが結果的には状況を悪化させてしまうんですね。少し皮肉な感じがします。

術後高血糖は、やはり元々糖尿病があると起こりやすくなりますので、早めに糖尿病予防・もしくは進行を予防をすることが重要です。


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