なぜ心臓病やその手術で入院したのにリハビリをするのか

身内または親戚の方で、心臓や血管の病気や手術で入院して、リハビリされている方をご覧になったことはありますか?

実は集中治療室でもリハビリは行われています。

というか、病院によりますが手術の翌日から座る、あるいは立つ、順調な方なら短距離から歩き始めることもあります。手術に伴う不要な体液を抜くドレーンという管が入っていてもです。

たまに、患者さんにもご家族にもびっくりされることがあります(もちろん、手術前日に基本的には説明します)。

もちろん傷は痛いし色々な点滴もたくさん付いていて、正直動きにくいです。しかし、病状が安定している場合、医療者はなるべく早く動かそうとします。

では、なぜそんな中動き始めるのでしょうか?

まず、体を起こしたいからです。手術中は人工呼吸器が入っており、その影響で痰や老廃物が増えたり、肺の末端の方がつぶれる、あるいはつぶれやすくなっています。特に、仰向けで寝ていることが多いため背中側ですね。内臓も、寝ているときは背中側の横隔膜を押し上げるように平べったく流れます。そのため、人工呼吸が背中側に空気を送り込みにくいのです。

ですから上半身を起こすだけで、ある程度は悪影響を減らせます。最低でも、ベッドの背もたれを上げて寄りかかるように座るだけでも寝ているよりは良いのです。

また、安静にしすぎると、心臓がそれに慣れて、体を起こした時に十分働けず低血圧になってしまい、起立性低血圧という脳貧血のような状態になってしまい、めまいや冷や汗、吐き気などの症状が出ることがあります。

誰でも、同じ重さだったら上に物を持ち上げるより、横に滑らせる方が楽ですよね?心臓も同じです。働かなくたって良いなら楽な方に合わせますよね。

また、重要なこととして、過度な安静により、筋肉が分解されます。1日寝てると3%落ちると言われます。

体は、なるべく少ないエネルギーで動けるように常に省エネモードです。その方が食料が少なかった時代に生きやすかったからです。

筋肉が多いと、基礎代謝、つまり寝ているときでも消費カロリーが多くなりますね。つまり、安静にしていて、しかも手術というある意味大怪我を負っている状態で、動かさない筋肉はリストラ対象なのです。もちろん、これは手術後でなくても同じ事です。

使わない筋肉は分解してエネルギーにしちゃおう、ということになるわけです。

余談ですが、骨も我々の体を支える役目の他に、カルシウム貯蔵庫という役割もあるため、負荷がないと骨量が減ります。

筋肉が減ると、結果的に心臓の負担が増えると共に、疲れやすくなって入院中やその後の活動量が減り、健康寿命が短くなりやすいです。

ですから、早め早めにリハビリが始まるんですね。


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